ひらき

アパートの誰かが、共同水場でサンマを開いたままほったらかしにしている。

PSAPPの3rdアルバムを買った。
家で聴いていると、2曲目のイントロのところでCDが音飛びをするように聞こえたので(実際、音飛びと錯覚するような要素がたくさん含まれる楽曲が多い)、プレーヤーの再生分秒を示すデジタル表示をしばらく睨んでいた。
今飛ぶか!今飛ぶか!と思うと緊張して、胃がきしみだした。
こんな事で馬鹿馬鹿しい。

日曜、久しぶり宇治の実家へ帰り、車を運転して滋賀へ。
横に、多分に将来のある若い人を乗せていたので、慎重な運転を心掛けたつもりだが、帰り道で大雨になり、逢坂山越えたあたりの、名神道とか三条へ出る道などの、ちょっとややこしい構造の分岐のところで、視界が悪いせいもあるがどっちに行っていいかわからず、車線変更でかなりモタモタした動きをした。
迫り来る分離帯に焦る。
ドン臭い運転は相変わらず。
また、実家から滋賀県のロードマップを借りたのを、そのままアパートまで持ってきてしまった。
前にも同じような経緯で持ってきてしまった、同じ滋賀県の地図がもう1冊あるので、両親が買い直したやつを、2度もパクッてしまったことになる。
悪いことをした。

社長にたくさん貰ったみかんを、アパートお隣りに住む女性にお裾分けした。
いつもきちんと挨拶をされる、目のきれいな人だ。
晩に共同洗面所で歯をみがいていたらその女性が米を研ぎにやってきて来て、僕に気付き、このあいだのみかん、美味しく頂きました、ありがとうございます、と僕にお礼を言い、
続いて、あのみかんはお知り合いに貰われたんですか、という質問。
それにたいして僕は、いや、あのみかん、味がだいぶボケていたでしょう、会社にたくさんあって腐りそうだったのを押しつけられたんですよ、と心にも無いことを答えてしまった。
僕もみかん、ありがたく、美味しく頂いたのに!
すると女性は、真顔でしずかに、社長さんに良くされたんですね、と言って、研ぎ終わった米を持って行ってしまった。
またやってしまった僕の悪い癖、それ系発言。
その夜、布団にもぐって、
「何で俺あんなこと言うねん…!」を延々。

知恩寺てづくり市の日にいつも入口を開放してフリーマーケットを催す家がアパート近くにあって、そこで千円で売っているサンプラーを見つけた。
欲しいなあと思いつつも買わずにアパートに帰り、てづくり市で買ったかりんとうを食べながらワインを飲んで気持ちよくなって音楽かけて踊ったりしているうち再びサンプラーのことを思い出した。
もう一度行くとサンプラーは無くなったおり、店頭にいた店員に「サンプラー売れたんですか?」と聴いた。
そして店員がそれに答えようとした瞬間、道路のほうで大きな音がして、店員も僕も他にたくさんいた客もみんな一斉にそちらのほうを見た。
自転車同士の衝突事故で中年女性と若い女性だった。
若い女性のほうが顔からアスファルトの地面に激突していてなかなか衝撃的な絵だったが、
その女性はすぐに立上がり、顔から落ちたに拘らず平気そうだったので安心した。
しかしその事故後、こちらに話を戻すと、店員は僕の質問に答えず他の客の応対をしだしたし、僕のほうもサンプラーが無い、ということは売れたことは自明だから店員にいちいち訊く必要は無い、という思いが心のどこかにありながらも店員に訊いた、というのが本当のところなのでそれを受け入れた。
リセットと言うのか、こういうことが日頃よくある。
そのまま店を後にし、猫に逢いに猫スポットに行った。

知り合いが飼っている犬と散歩に行く。
犬ひもは、最近よく見掛ける細いリードの、手元のボタンで長さがのびちぢみするやつを渡され、最初、操作に馴染めず少し緊張する。
賀茂川べりに出たところで猫に会った。
猫は全然怯む風もなく、じっと犬を観ている。犬は興味半分、怯え半分、といったかんじだ。
両者しばらく睨み合っていたが、犬が先にあとずさった。
川辺のベンチに座って犬ひもを最長にして草むらを好きにくんくんさせたり、引き寄せて着ているジャンパーの中に犬を入れて抱っこして、一緒に冷たい川風に震えたり、他人の犬をめいっぱい好きにした。
近くに練習場がある京都市交響楽団のトランペットがずっと聞こえていた。
朝、会社のすぐ前まで歩いて来たところで、右足の靴の裏に落ち葉がごっそり付着しているのに気付いた。
靴を裏返してみたら犬の糞が付いていて、そのお陰で糺の森の落ち葉や砂利がに大量に付いている。
このまま会社に行くわけにはいかないので、糺の森まで引き返して、靴を森の中を流れる小川で洗うことにした。
川べりの手頃な石に腰掛けて、靴の片足を脱ぎ、川面に浸してぺちゃぺちゃやったり落ちてる木の枝でしごいたり。
数十分しておおかた取れたので靴を履き、再び会社に向かった。
会社には始業時間にぎりぎり間に合う。
いつもより遅い到着に、会社の女の人に何事かあったのか尋ねられたので、犬の糞を踏んだことを言った。
まずその事件に女の人は笑った。
そこで次にその後の顛末、糺の森まで引き返して小川で靴を洗うくだりを話したのだが、何故か話が進むにつれさっき笑った女の人の顔がどんどん真顔になる。
そして話が終わると彼女は「犬の飼い主が糞の始末をしないこと」を非難した。
僕は朝の森の小川で靴をぺちゃぺちゃやるのはやってみるとけっこう趣があって良い気持ちだったので、そのような非難は思いも寄らなかった。
そういえばそうだな、と言われてから思った。
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